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先読み式イノベーションその8

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    成功法は寝て待て!

     

     過去7回にわたって未来型ブルーオーシャンを先読みするテクニックについて解説しました。今回は、未来型ブルーオーシャンを先読みできた後何をすべきか、について説明します。未来型ブルーオーシャン市場を完全に独占したいのであれば、自ら事業化のための研究開発を行ってその成果を随時特許化する必要がありますが、今回は、他社の成功例に便乗する奇策を説明します。一言でいえば、「未来型ブルーオーシャンを特許で独占した後、具体的な事業化は自然淘汰で生き残った成功事例を待て」です。

     

     5年先に誕生するブルーオーシャン市場に今から飛び込んで事業化しようとしても時期尚早で成功しません。しかし、先読みできたブルーオーシャンを独占する方法があります。特許です。特許出願して5年後には特許が成立する時期になります。先ずは、推測されるあらゆる事業形態を明細書に記載して広い請求の範囲で出願します。その後は、市場を睨みながら自然淘汰で生き残った成功事例を狙い撃ちできる請求の範囲で分割出願を繰り返し行います。これらの特許は、先行技術が少ないため基本特許(必須特許)になります。

     

     前回のブログで、ヒットを狙うには「数撃ちゃ当たるマシンガン方式」がよい旨記載しました。開発コストを下げるには、多数のイノベーションを市場に晒して自然淘汰により生き残った成功事例が出てくるのを待つという方法があります。つまり、厳しい自然淘汰の洗礼は他社に担ってもらうという手法です。こんなことができるのも、早い段階で出願した基本特許を保有しているためです。

     そして、自然淘汰で生き残った一番の成功会社と互いの特許権でクロスライセンスを締結し、極力2社だけでブルーオーシャン市場を独占します。

     以上説明した奇策は反対意見も多数あると思います。例えば、「自ら汗を流して事業化に貢献していない会社が後に甘い汁を吸うのはけしからん」などの声が聞こえてきそうです。しかし、未来型ブルーオーシャンがどこに誕生するかを予測し、それを特許公開公報で公開することにより、将来誕生する巨大ブルーオーシャンを世の中に初めて紹介した貢献を無視すべきではないと思います。これを見た多数の企業が事業化のために動き出すのであり、どのような方向で事業化すれば成功するのかという羅針盤の役割が発揮されます。

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    先読み式イノベーションその7

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       森の生態系の頂点に君臨する王者よりも強いものは森自身!

       

      ■プラットフォームとは

       ここでのプラットフォームとは、OS(オペレーティングシステム)のことではありません。プラットフォームの言葉本来の意味は、平らに盛り上がったところを指し、それが築かれてはじめてその上部のものの構築に手をつけられるものです。ここで用いるプラットフォームは、その上で個人や企業が様々な活動を展開する場の意味です。

       プラットフォーム化の法則とは、イノベーションを実際にビジネス展開していく上ではプラットフォーム化するのが有利であるという法則です。

       プラットフォーム化の過去の例としては、amazonのウェブサービスが有名です。amazonは、自社で蓄積している膨大な商品情報のデータベースを広く開放し、個人やベンチャーが、amazonの提供したAPIを利用してamazonの商品を売ることができるようにしました。これにより、多くのウェブアプリケーションが生まれ、その新たなウェブサイトを通じて行なわれる購買行動に対して、amazonが手数料を得るビジネスモデルが構築されました。プラットフォーム化によるamazonの狙いは、「誰もがamazonのプラットフォームに寄生しなければ生きていけない世界を作り出すこと」だったようです。

       他の例としては、アップルの「AppStore」が有名です。アップルからはiPhoneのソフト開発キット(SDK)が公開されていて、このSDKを利用して開発されたソフトをアップルに申請すれば、審査の上でAppStoreで販売されます。

       このAppStoreに対抗するべくグーグルはAndroid Marketという同様のアプリケーション流通・販売プラットフォームを構築しました。

       

      ■プラットフォームビジネスの利点

       多数のプレイヤーが活動しやすいプラットフォームを構築すれば、その上で多数のプレイヤーを活動させることにより、プレイヤー自身が利益を得るとともに、プラットフォーマーにも手数料が入る仕組みができます。特に、他者に先駆けてプラットフォームビジネスを巨大化することにより、それがデファクトスタンダードとなり、プラットフォーム市場の独占が可能となる点が有利です。

       プラットフォームのさらなる利点としては、プラットフォーム上にエコシステム(生態系)ができ、市場での自由競争原理に従った自然淘汰により、市場ニーズにマッチした製品やサービスに進化させることができる点です。

       例えばAppStoreの場合、AppStoreというプラットフォーム上に、個人プログラマー、アプリ制作会社、アプリ発注会社、アプリ受注制作会社、インキュベータ(例えばKDDI Labo)等の種々のプレイヤーが活動しています。これらのプレイヤーから成るエコシステム(生態系)から日々たくさんのアプリが生まれますが、そのアプリの大半は市場での自由競争原理に従って自然淘汰され、進化して残ったアプリのみがヒットします。

       良いものかどうかを決めるのは、会社内の企画部や技術開発部ではなく、消費者(ユーザ)です。良いものが売れるのではなく、「売れるものが良いもの」なのです。良いものを作ろうとするのではなく売れるものを作ろうとすべきです。

       プラットフォーム上でのエコシステム(生態系)内で自然淘汰され進化して残ったアプリは、まさに消費者(ユーザ)が選んだアプリであり「売れるアプリ」です。

       プラットフォーム上でのエコシステム(生態系)は、「良いものではなく売れるものを作るための生産工場」と言えます。

       

      ■ヒットを狙うには一発方式からマシンガン方式へ

       一般的にいって、組織が大きくなればなるほどイノベーション開発手法は、「狙いをすました一発方式」になる傾向があります。長時間かけて何度も会議を繰り返して市場ニーズを絞り込み、必ず命中するまで狙いを絞り、その上で一発撃つというやり方です。その典型例が、過去日本政府が推進してきたシグマ計画、第五世代コンピュータ、情報大航海プロジェクト等です。この「狙いをすました一発方式」の場合、市場ニーズにマッチしない無用の産物をつくり出す危険性があります。

       

       近年、ニーズの多様化が原因で、市場ニーズが見えにくくなっており、しかも、すぐに変化して移り変わる傾向があります。よって、このような性質を持つ近年の市場ニーズを射止める最良の方法は、市場ニーズの大まかな位置が分かった段階で、その市場ニーズが変化する前に間髪をいれず多数の弾丸を撃ち、そのうちのいずれかが命中するという、「数撃ちゃ当たるマシンガン方式」です。つまり、多数のトライ&エラーを繰り返さなければ、市場ニーズを射止めることはできません。

       

       この「マシンガン方式」に最適なシステムがプラットフォームです。プラットフォーム上で活動する多数のプレイヤーが多数の弾を撃ち、自由競争原理に従った自然淘汰により、市場ニーズにマッチした製品やサービスだけが生き残ります。

       

       プラットフォーム側は、このような自然淘汰の厳しい生態系内に足を踏み入れることなく利益を享受できるというメリットがあります。

       

       つまり、森の生態系の頂点に君臨する王者よりも強いものは森自身ということになります。

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      先読み式イノベーションその6

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         わざわざ羽ばたいて飛ぶ飛行機を造ってもしかたがない

         

         テクノロジーの強みは、人間が欲する欲求に的を絞ってそれをダイレクトに叶えることに特化できる点です。分かりやすい例えを示します。鳥は飛ぶことができますが、動物という制約が起因して羽を羽ばたかせることでしか推進力を得られません。一方テクノロジーは動物という制約がないため羽を羽ばたかせることによる推進力に限定されません。その結果、早く飛びたい、遠くまで飛びたい等の人間の欲求をよりダイレクトに叶えるための推進力、すなわちプロペラの回転による推進力、ジェット噴射による推進力が開発されました。これを「欲求充足のダイレクト化」と呼びましょう。

         

         或る欲求を充足するためのテクノロジーを開発するにあたっては、この「欲求充足のダイレクト化」というテクノロジーの強みが十二分に発揮できるように開発すべきです。

         例えば、メタバース(コンピュータによって生み出されてインターネット上に存在する仮想世界)は、現実の世界という物理的制約から解放され、ユーザの欲求を最短距離で達成する機能だけに特化した世界に進化していくことが予想されます。逆に言えば、現実世界でできることを仮想世界で同じように行なっても、なんの価値もないということです。例えて言えば、わざわざ羽ばたいて飛ぶ飛行機を造るようなものです(却って面白いかも。笑)。

         

         特に、前々回の「先読み式イノベーション(その2)」と欲求充足のダイレクト化の法則との組合せが重要です。「先読み式イノベーション(その2)」での教訓は、「ヒットするイノベーションを開発するには、何が目的(根底的欲求)で何がその目的を達成する手段(行動パターン)であるかを見極めることが重要」でした。この教訓で見極めた「目的(根底的欲求)」に対して欲求充足のダイレクト化の法則を適用することにより、イノベーションが生まれます。

         

         スーパーにやかんを購入しに来たお客を見て、その購買行動の根底に「いつでも手軽に熱湯を手に入れたい」という目的(根底的欲求)があることを見抜き、そこに「欲求充足のダイレクト化の法則」を適用すると、瞬間湯沸かし器というイノベーションが生まれます。

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        先読み式イノベーションその5

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           テクノロジーとニーズは相互に影響し合いながら複雑に変化します。

           

           テクノロジーはユーザのニーズを満たすために開発されます。ところがユーザのニーズは提供されたテクノロジーによって変化します。その結果、テクノロジーとニーズは相互に影響し合いながら複雑に変化していきます。これを「テクノロジーとニーズの相互作用」と呼びましょう。以下に具体例を示します。

           

           マズローの欲求の階層説(生理的欲求→安全欲求→愛情欲求→尊敬欲求→自己実現欲求)での最上位階層に位置するのが「自己実現欲求」です。この「自己実現欲求」を満たすための具体的手段(行動パターン)が、インターネット(特にSNS)の普及により変化しました。

           

           インターネットの普及以前では高級ブランド品や高級外車等の購入が流行しました(記号消費)。このような行動を起こす動機付けは、主に、自己実現に成功した証のため、また他人から尊敬され認められたいためと思われます。この時代は「モノで自分を語る」から「モノ語り消費」とも言われていました。つまり、この時代では、「自己実現欲求」を満たすための具体的手段(行動パターン)は主に経済的成功を成しとげることでした。言うなれば金銭的物欲の時代です。

           

           一方、インターネットの普及以降では、草食系男子という言葉が流行り、若者の草食化が指摘されるようになりました。また若者の消費離れも指摘されるようになりました。さらには、若者の「社会貢献志向」が高まりました。「自己実現欲求」を満たすための具体的手段(行動パターン)は、NPO等による社会貢献活動にかかわることを通じて、人や社会やコミュニティとつながりを持ちたいという「社会献志向」に変化してきました。

           

           第一生命経済研究所の主任研究員北村 安樹子氏は、Life esign REPORT 2008.3-4により、次のように述べています。

           「企業による新卒採用の動きが活発化しつつあるなか、近年ではNPOや社会的企業といった組織が若者の関心を惹きつけている。・・・NPO従事者ではNPO収入の有無にかかわらず、「いろいろな人や社会とのつながりをもちたい」「自分の能力や可能性をためしたい」「仕事を通じて達成感をえたい」「社会のために貢献したい」といった、自己実現や社会貢献に関する理由をあげる人の割合が同世代の企業従業員に比べて大幅に高い。」

           また、若者はなぜ「繋がり」たがるのか(武田徹著)には次のことが述べられています。「社会的地位の確立しない若者は、自らの社会への参加と社会や仲間社会からの認知をより強く確認したがる。」

           以上のことから次のような言葉が出てきます。「つながり願望」「社会貢献志向」「自己実現」「認知」

           

           ここで、どれが目的(根底的欲求)でどれが具体的手段(行動パターン)かを見極める必要があります。1番根底にある欲求はなんと言っても「自己実現欲求」でしょう。

           

           それでは、「つながり願望」「社会貢献志向」「認知」では、どれが目的(根底的欲求)側に位置しどれが具体的手段(行動パターン)側に近いのでしょうか。

           私は、「認知」を満たす具体的手段(行動パターン)として、「つながり願望」や「社会貢献志向」が出て来るのだと考えています。つまり、社会や仲間から認知されたいという「認知欲求」が目的(根底的欲求)側に位置し、「つながり願望」や「社会貢献志向」が具体的手段(行動パターン)側であると考えています。

           

           次に、若者の根底的欲求を満たすための手段(行動パターン)が「つながり願望」や「社会貢献志向」に変化したことがテクノロジーに影響を与え、それらの行動パターンを支援するためのテクノロジーが発展しました。それがSNSです。

           SNSの発展がさらに若者の行動パターンに影響を及ぼし、つながり願望と社会貢献志向とがますます増殖する一方、金銭的物欲がますます減少しました。その結果、若者は「つながり願望」や「社会貢献志向」を直接満たしたくれるSNSに走り、モノ自体を消費しなくなりました。

           なお、金銭的物欲(記号消費)からつながり願望(つながるための消費)へのニーズの変化が生じた理由については、佐々木俊尚著キュレーションの時代(ちくま新書)の第二章:背伸び記号消費の終焉で詳しく解説されています。私の価値観のフィルタを通して要約すれば、次のようになります。

           「インターネットが普及した環境に長年住むことにより、CGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)が興りビオトープが多発して情報の流れが千差万別化した結果、上流から下流へと情報を流すマスメディアが衰退し、そのマスメディアの存在を大前提としている記号消費が消滅した。その結果、金銭的物欲(記号消費)からつながり願望(つながるための消費)へとニーズが変化した。」

           

           結局以下のようになります。

            〆底的欲求としての自己実現欲求を満たすための行動パターンとして、金銭的物欲で記号消費を行なっていた時代に、インターネットが登場し、若者の行動パターンに影響を及ぼしました。

           ◆,修侶覯漫⊆禺圓旅堝哀僖拭璽鵑、「認知欲求」とそれを満たすための具体的手段(行動パターン)としての「つながり願望」や「社会貢献志向」に変化しました。その行動パターンの変化がテクノロジーに影響を与え、「つながり願望」や「社会貢献志向」をよりダイレクトに満たすテクノロジー、すなわちSNSが発展しました。

            そのSNSがさらに若者の行動パターンに影響を及ぼし、「つながり願望」と「社会貢献志向」とがますます増加する一方、金銭的物欲がますます減少しました。その結果、若者は「つながり願望」や「社会貢献志向」を直接満たしたくれるSNSにどっぷり浸かり、モノ自体を消費しなくなりました。

           

           以上をまとめれば、

           a ニーズの変化=行動パターンの変化

           b 根底的欲求は変化しないが、ニーズ(行動パターン)は与えられたテクノロジーによって変化する

           c ニーズ(行動パターン)の変化がテクノロジーに影響を及ぼし、テクノロジーが変化する

          となります。

           

           上記bを逆に言うと、人間を取り巻くテクノロジー環境により「根底的欲求を満たすための手段(行動パターン)」の変化の方向をコントロールすることが可能ということになります。つまり、「ニーズ変化の法則」を研究すれば、どのようなテクノロジーを提供するかによって未来のニーズをコントロールできるようになるかもしれません。これが可能になれば、「未来のニーズ」は、予測するものではなく創り出すものとなります。その結果、計画的に先読み式イノベーションを開発できるようになります。この未来ニーズをどのようにしてコントロールするかについては、私も未だ解明できておらず、現在研究中のテーマです。

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          先読み式イノベーションその4

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             未来型ブルーオーシャンを予測する際に重要なことが、或る現象が起こったときになぜそのような現象になったのかのとどのつまりの原因(深層原因)を追究することです。例えば「若者の消費離れ」や「若者の草食化」という現象が生じていますがその深層原因はなにかを追究しなければなりません。その深層原因が分かって初めてその原因にピントが合ったイノベーションを開発できます。

             

             深層原因の追究に有用なテクニックとして「仮説検証法」があります。

             原因を追究するための仮説検証法とは、或る現象が生じたときにその原因についての仮説を立て、その仮説に反する現象(反現象と称する)を探し、見つかれば仮説が間違っているためにその反現象にも矛盾しない新たな仮説を立て、これを反現象が出て来なくなるまで繰り返す思考法です。

             

             分りやすい例えを示します。鳥はなぜ空を飛ぶことができるのか、その深層原因(本質的理由)を仮説検証法により追究してみましょう。

             仮説1:深層原因は羽を羽ばたかせているためである。

             反現象:真空の空間ではいくら羽ばたいても飛べない。

             仮説2:羽ばたくことにより空気を進行方向とは逆方向に移動させていることが深層原因である。

             反現象:空気を進行方向とは逆方向に移動させていないのに飛べるものがある。例えば花火。

             

             仮説3:空気は単なる一例にすぎず、空気のような質量を有するものを進行方向とは逆方向に移動させることによってその反作用の力により鳥が飛ぶ。

             このように仮説を重ねるごとに深層原因に近づくことができるのが仮説検証法です。

             

             それではもう1つ、前述の「若者の消費離れ」の深層原因(本質的理由)を仮説検証法により追究してみましょう。「最近の若者は車に乗らないしテレビも見ない、酒も飲まない。これじゃモノが売れない。」という嘆きをよく耳にします。このような「若者の消費離れ」は、不透明なニーズを推理する上で重要なテーマです。これを仮説検証法により明らかにしてみましょう。

             仮説1:以前に比べて若者が貧乏になったのが深層原因である。

             反現象:貧乏なら消費対象が生活必需品に限定されるはずだが、例えばスマートフォンやソーシャルゲームのアイテム等は惜しげもなく消費する。

             仮説2:若者のニーズが金銭的物欲から人とのつながり願望に変化した。そのつながり願望を満たす代表がSNSであり、SNSは金銭的な消費を必要としないものであるため。

             

             それでは、なぜ若者のニーズが金銭的物欲からつながり願望に変化したのでしょうか。これはかなりの難題で難しい話になりますが、未来を推測する上で重要なテーマですのでご容赦ください。

             仮説1:生まれたときからネットを通じていつでもどこでも人とつながることが可能な環境で育ったため、つながり願望が高まった。

             反現象:例えば、いつでも海外旅行に行ける環境に育った若者よりも、めったに海外旅行に行けない環境に育った若者の方が、海外旅行への願望は強い。同様に、生まれたときからネットを通じていつでもどこでも人とつながることが可能な環境で育った若者よりも、あまり人とつながることができない環境で育った若者の方がつながり願望が高いのでは。

             仮説2:例えば、電気設備が完備された環境で育った国民は電気のない環境で育った国民に比べて電気に対するニーズが高い。これは、電気のある生活に長年慣れ親しむことにより電気が生活の中に深く浸透して生活の一部となるためである。人とのつながりも電気設備と同様に長年その環境に慣れ親しむことにより生活の一部化する性質のものである。

             反現象:例えば、ラテン系の民族は電気のない時代でも電気のある時代になってからも陽気な民族性は一貫しており変化しない。同様に、人とのつながりが生活の一部化してつながり願望が高まったとしても、金銭的物欲も一貫して存在するのでは。金銭的物欲が減少した理由の説明にはなっていない。

             仮説3:マズローの欲求階層説における「自己実現欲求」は一貫して存在しており、その「自己実現欲求」を満たす具体的手段(行動パターン)が変化した。消費による金銭的物欲に走る行動パターンから、人や社会とのつながりを大切にし社会貢献する行動パターンに肩代わりされた。人とのつながりが生活の一部化したとしても「自己実現欲求」自体は一貫して存在しており、その「自己実現欲求」を満たす具体的手段(行動パターン)だけが変化した。ラテン系民族の例えで言えば、ラテン系民族の陽気性は一貫して変化しない「自己実現欲求」に対応するものであり、その陽気性を表す具体的手段(行動パターン)のみが変化した。例えて言えば、以前はリオのカーニバルではしゃぐことにより陽気性を発揮していたが、それがネット上に陽気な写真を投稿することに変化した。

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            先読み式イノベーションその3

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              やかんを買いに来た客はやかんが欲しいから買いに来たわけではない。これは、人の心理的活動に潜む意外な法則の1つです。

               

               人は、行動の前提として目的(根底的欲求)があり、その目的を達成する手段(行動パターン)を選んで行動します。そして、目的(根底的欲求)は変化しませんが、手段(行動パターン)は周りの環境(テクノロジー)によって変化します。よって、イノベーションを開発するにあたっては、何が目的(根底的欲求)で何がその目的を達成する手段(行動パターン)であるかを見極めることが肝要となります。

               「そんなこと、どっちでもよいではないか」と思われるかもしれませんが、これがイノベーションを開発する上での重要なキーになります。分かりやすい例えを1つ挙げます。

               

               スーパーにやかんを買いに来たほとんどの客は、やかんが欲しいから買いに来たのではなく、いつでも手軽に熱湯を手に入れたいからやかんを買いに来ます。つまり、「熱湯が欲しい」が目的で、「やかんの購入」はその目的を達成するための手段(行動パターン)にすぎません。

               よって、「いつでも手軽に熱湯を手に入れたい」という目的をより叶えてくれる瞬間湯沸かし器を開発して売出せば、ヒット商品になります。

               しかし、客の中には、「やかんの購入」自体が目的の人もいます。例えば、やかんコレクターで世界の珍しいやかんを集めることを趣味にしている人です。そのような客に向かって、瞬間湯沸かし器を勧めても効果はありません。

               SNS等での若者のつながり願望も同じことが言えます。つながり自体は目的ではなく他に目的があり、その目的を達成するための手段(行動パターン)として「つながる」のであれば、その目的を叶えてくれるより良い手段を別に開発すれば、ヒットします。現在のSNSを凌駕する大ヒット商品に案る可能性があります。逆に、つながること自体が目的であれば、ヒットしません。

               

               このように、ヒットするイノベーションを開発するには、何が目的で何がその目的を達成する手段(行動パターン)であるかを見極めることが重要です。

               「そんなこと簡単だ。ユーザ(客)に直接質問すればよいではないか」と思われるかもしれませんが、実際はそう簡単ではありません。

               

               前述のやかんの例えで説明します。瞬間湯沸かし器のない時代を想像してみてください。その時代に、「あなたはやかんが欲しいからやかんを買いにきたのですか。それとも目的は別にあってその目的を達成するためにやかんを買いに来たのですか。」と尋ねたとします。すると必ず次のような答えが返ってきます。「やかんが欲しいからやかんを買いにきたに決まっているだろう。分かりきった質問をするな。」

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              先読み式イノベーションその2

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                 前回は、「未来型ブルーオーシャン(5年先に生き物であふれかえるおいしい海)をいかにして予測するか」で終わりました。その予測の手段として「先読み式イノベーション」という概念を提唱します。先ずは、分かりやすい具体例を物語り風に記載します。

                 

                 1895年米国テキサス州に住む青年実業家のジョンは他人と同じことをやるのが嫌いな変わり者である。実業家としての先見の明があり金儲けの才能だけは折り紙つきだ。朝新聞に目をやるとジョンは次の記事にくぎ付けになった。「画期的な石油掘削技術ロータリー掘削法で深度100メートルを掘り抜くのに成功!」

                 

                 そのときジョンの金儲けの臭覚が大きく反応し思わず叫んだ。「また金のなる木を見つけたぞ! これからはこのロータリー掘削法で世界中の石油を掘削する時代になるはずだ。ロータリー掘削法を応用した掘削機械を開発して売出せば儲かるぞ。」

                 しかしジョンは考えた。掘削機械の開発販売は資本力とマンパワーのある巨大企業が我先に開発するレッドオーシャン(血で血を洗う競争の激しい領域)だ。競争が激しすぎて薄利多売に陥りやすい。だったらそのようなビジネスは他人に任せよう。

                 それでは、もう少し未来を先読みしてみることにする。ロータリー掘削法による掘削機械が普及すれば、掘削された石油が大型船舶により世界中に輸送されて貿易される時代がやってくるはずだ。そうなると、大型船舶がパナマを通過できるようにしてほしいというニーズが将来生まれるはずだ。だから、パナマに大型船舶が通過できる運河を造ろう。通行料を取れば儲かるぞ!

                 

                 先読み式イノベーションとは、将来新たに生まれる巨大ニーズを推理しその未来のニーズに応えるためのイノベーションです。

                 先読み式イノベーションの利点は、薄利多売の価格競争となりやすいレッドオーシャンを避けて早い段階から開発に着手し、先行者利益を独占することによりオンリーワンの地位を築きやすい点です。

                 イノベーションに詳しい人だと、上記ジョンの話を読んで、「新市場型の破壊的イノベーション」とどこが違うの? と疑問を持たれるかもしれません。ここで少し、既存のイノベーションの概念を説明しておきます。

                 ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン氏が提唱したイノベーションには、持続的イノベーションと破壊的イノベーションとがあり、破壊的イノベーションにはローエンド型と新市場型とがあります。

                 持続的イノベーションとは、従来製品の改良を進めるイノベーションのことです。

                 破壊的イノベーションとは、確立された技術やビジネスモデルによって形成された既存市場の秩序を乱し、業界構造を劇的に変化させてしまうイノベーションのことです。

                 持続的技術による性能向上が繰り返され、製品性能が市場ニーズを超えて過剰になると、低性能/低価格の製品を受け入れる素地が整うことになります。こうした既存市場よりも下位に当たる市場を狙う破壊的イノベーションを「ローエンド型破壊」と呼よびます。これに対して、価格以外の価値基準で評価される破壊的イノベーションを「新市場型破壊」と呼びます。

                 新市場型の破壊的イノベーションの例としては、デジタルカメラが挙げられます。デジタルカメラは「その場で見られる」「パソコンに保存できる」という新しい性能を提供することで、従来のカメラとは異なる需要を創造しました。

                 

                 先読み式イノベーションと新市場型の破壊的イノベーションとの共通点は、両者共にブルーオーシャンをターゲットにしている点です。

                 一方、相違点としては、先読み式イノベーションは新市場型の破壊的イノベーションと比べて次の2点で相違します。分かりやすくするために、前述のパナマ運河の話を基に説明します。

                  .僖淵泙鳳寝呂鯊い辰燭箸海蹐如既存市場(石油掘削機械の市場)をなんら破壊しない。むしろ、石油掘削機械の市場が発展して大きくなればなるほど、パナマ運河も発展するという、共栄関係にある点。

                 ◆仝住点では市場すら存在せず、石油掘削機械の市場が発展することによってパナマ運河市場が新たに生まれてくる点。

                 

                 新市場型の破壊的イノベーションが対象としている「新市場」を未来世界で新たに誕生する未来市場に定めたものが、この先読み式イノベーションです。

                 未来はテクノロジーと人間のニーズとの相互作用によって作られます。テクノロジーは人間のニーズを満たすために進化します。一方、人間のニーズはテクノロジーの影響を受けて変化します。両者が複雑に絡み合って未来が出来上がります。よって、未来を先読みするためには、先ず人間のニーズに関する研究をする必要があります。

                 

                 次回は、この人間のニーズを把握する上で必要不可欠となる「人の心理的活動に潜む意外な法則」について、解説します。

                iff-society * - * 07:16 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

                先読み式イノベーションその1

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                   ビッグマネーを儲けたいなら、5年先の未来に誕生する巨大ブルーオーシャンを先読み独占することをお勧めします。

                    以下の興味深いブログを見つけました。

                  ブルーオーシャン症候群 | On Off and Beyond

                   

                   私の独断で要約すると次のような感じかな。

                  「日本企業に蔓延する病ブルーオーシャン症候群は、「自社事業とは遠いところに、競争が少なくて儲かる事業領域があると信じている」というような症状である。

                   アメリカなどではブルーオーシャンはほとんど聞かない言葉である。元マッキンゼーコンサルタントの日本人3人の会話は、次のようなもの。

                   「楽勝で参入できる競争が少なくて儲かる事業領域など、あるわけがない。簡単に儲かる領域なんかあったらもう誰かやってるよね。そもそも、真っ青な海っていうのは生き物がいないつまらないところ。」

                   2005年にINSEADの教授が出版したブルーオーシャン戦略という書籍には、ブルーオーシャンの発見方法として、次の6つが記載されている。

                   代替業界を狙う、同じ業界内の異なる戦略グループを狙う、既存製品のバリューチェーンの中で違う顧客を狙う、補完製品やサービスを狙う、機能性で訴求するか、感情に訴求するかで、今までと違う方を狙う、今起こっている破壊的技術・ライフスタイルの変化が続いた結果、自らの市場の将来がどうなるかを論理的に考え出し、その市場に訴求する製品を考える」

                   

                   上記元マッキンゼーコンサルタントの日本人3人の会話も、ブルーオーシャンの発見方法も、共通して言えることは、主に現在しか見ておらず、時間軸を考慮した戦略に欠けています。

                   「そもそも、真っ青な海っていうのは生き物がいないつまらないところ。」たしかに、時間軸を考慮しなければ(現時点しか見なければ)つまらないところです。しかし、その「真っ青だったその場所が、5年先に生き物であふれかえる海」に変貌することを予測できれば、話が違ってきます。「今現在はただの真っ青だが、未来では生き物であふれかえる海」、これこそが「未来型ブルーオーシャン」です。

                   ここで1つ問題が生じます。5年先にやっと生き物であふれかえる海になるのであって今現在は真っ青な海に対し、急遽こぎ出してビジネスを始めたところで、時期尚早であり、成功しません。しかし、5年先に生き物であふれかえる海を自分の領域だとして事前に先取りできる手段があるとしたら、いかがでしょうか。その強力な手段が「特許」です。

                   しかも、今現在はただの真っ青な海であるため、どこも見向きもしておらず、未だ特許出願されていない領域のため、取りたい放題特許で独り占めできます。5年後に生き物であふれかえったところで自社特許が成立し、その生き物であふれかえったおいしい海を独り占めするという寸法です。

                   

                   このようなおいしい話を実現させるにおいて必要不可欠となるのが、未来型ブルーオーシャン(5年先に生き物であふれかえるおいしい海)をいかにして予測するかです。この点に関し、私は長年研究してきました。次回以降、その予測テクニックについて、解説します。乞うご期待!

                  iff-society * - * 07:15 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

                  未来モバイルライフシミュレーション

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                    5年先のモバイルライフをシミュレートした未来社会を物語風に記載します。少し長くなりましたが、SF小説でも読むつもりで楽しんで下さい。

                     

                     2019年11月、鈴木恵子は、都内の大学に通う英文学科の学生だ。新しいもの好きな女性である。先日ダウンロードしたアプリをONにして東京の街を歩くのを楽しみにしている。そのアプリの名前は、「もう1つのセカイ」という。街を歩いているとバーチャル世界(もう1つのセカイ)から話しかけられるという、なんともはや奇想天外なアプリである。

                     

                     今日は面白そうなイベントが渋谷で開催されるので、午後からの授業をサボって渋谷のマークシティーあたりを歩いていると、早速私のGoogleグラスにチャットが表示された。バーチャル世界から誰かがチャットで話しかけてきている。Googleグラスには、相手方の話した言葉が表示されている。

                     My name is Bob. I am a 20 year-old Englishman. I am planning to go on a trip to Tokyo soon. I am interested in the town of Shibuya. Please tell me about a recent Shibuya.

                     まあ、イギリス人からだわ。東京旅行の下見みたいね。私もイギリスに行ってみたいので、コンタクトをつけておくのも悪くはないわね。

                     そう思って私は、渋谷の現状をいろいろと教えてあげた。

                     

                     このアプリ「もう1つのセカイ」のからくりはこうだ。

                     先ず、例えばストリートビューのように現実世界(リアル世界)をコピーしてデジタル映像化したバーチャル世界(メタバース)を用意する。次に、GoogleグラスのGPS機能を利用して、リアル世界にいる人のアバターをバーチャル世界の対応する位置に映像表示する。例えば、私が渋谷の街を歩いている最中、私のアバターがバーチャル世界内の渋谷を同じように歩く。バーチャル世界に進入した他人がそのアバターを見つけてチャットで話しかければ、その話し言葉がリアル世界の私のGoogleグラスに表示される。もちろん直接通話も可能だ。

                     

                     バーチャル世界のよいところは、どこにでも瞬間移動できる点である。先ほどのイギリス人ボブは、イギリスにいながらにしてバーチャル世界に進入して渋谷に瞬間移動して来たのだろう。そして、ちょうど渋谷を歩いていた私のアバターに話しかけてきたというわけだ。このアプリ「もう1つのセカイ」のおかげで、最近バーチャル世界(メタバース)がずいぶんとにぎやかになった。以前のバーチャル世界は他人のアバターにほとんど出合うことがなくいつも閑散としていたが、今ではリアル世界を歩いている多くの人間のアバターでにぎわっている。

                     

                     私は、後々連絡が付くように「共有仮想タグ」を現在位置に貼り付けることを相手(ボブ)に提案した。この「共有仮想タグ」こそ「もう1つのセカイ」の最大の売りと思う。なにしろ、電話番号やメールアドレスや住所などの個人情報を一切相手に伝えることなく、後々コンタクトを取ることができるという、優れものだ。初対面で氏素性の分からない相手の場合、特に重宝する。あ! そうか ボブとはまだ実際には会っていないので、初対面未満だわね。

                     

                     この「共有仮想タグ」は、当事者(ボブと私)が互いのGoogleグラスのタグアイコンを同時にタップ操作することにより、その当事者の現在の場所(リアル世界とバーチャル世界との両方)に作成されて貼り付けられる。作成された「共有仮想タグ」は、当事者のGoogleグラスにしか表示されず、当事者のみがその「共有仮想タグ」にアクセスできる。バーチャル世界に進入して自分が作成した「共有仮想タグ」をタップすれば、コンタクト用ページが開かれ、互いに書き込みや閲覧ができる。気が向かない相手の場合には、その「共有仮想タグ」にアクセスしなければよいのである。

                     

                     もちろん、リアル世界同士の人が出会った場合にも同様に、出会った場所(リアル世界とバーチャル世界との両方)に「共有仮想タグ」を作成することもできる。私は安室奈美恵のライブによく行くので、そのライブ会場の観客と安室奈美恵との全員で同時にタグアイコンをタップして作成した全員の共有仮想タグが沢山ある。

                     

                     後々コンタクトを取る相手を特定するにおいて相手の名前などを知らなくても、「共有仮想タグ」が出会った場所に作成されているために、その場所が相手を特定する情報となる。バーチャル空間から「共有仮想タグ」が作成されている場所に行けば、出会ったときの記憶が蘇り、相手の名前などを知らなくてもコンタクトを取りたい相手か否か、判断が付く。

                     

                     このように「共有仮想タグ」が拘束力のないゆるいつながりを構築するものであるために、「共有仮想タグ」を作成する際の精神的障壁が少なく、最近ではだれもが気軽に「共有仮想タグ」を作成する風潮になった。ビジネス上で初対面の相手と名刺交換するのと同様に、プライベート上では初対面の相手と共有仮想タグを作成する。初対面の相手に対する一種の礼儀のようなもの、とも言えそうだ。昔の男は、彼女の電話番号やメールアドレスを聞きだすのにそれ相当の勇気が必要だったようだが、そのようなことは「共有仮想タグ」のおかげで懐かしい昔話しになってしまった。

                     

                     ボブとの会話(チャット)も終わり、ミネラルウォータを飲もうと鞄をあけたところ、あれ? 教科書が1つ無い! 大学の教室に忘れてきてしまったんだわ。今から取りに帰ったのでは、渋谷でのイベントに間に合わない。どうしよう。

                     そうだ、こんなときにこそ「もう1つのセカイ」を利用すればいいんだわ。私は早速バーチャル世界に進入して大学の教室に瞬間移動した。だれか知り合いがいればいいんだけど・・・バーチャル空間の教室内を見渡してみると、数人のアバターがいる。あれ? あのアバター確かアヤミじゃないの。ラッキー! 私はアヤミのアバターに話しかけ、教室に忘れている教科書を預かってもらうことにした。アヤミサンキュー。

                     

                     そういえば、以前の東日本大震災のときにもこの「もう1つのセカイ」が大活躍したと、ニュースで報道していたわね。地震直後に救援隊の1人が先ずバーチャル世界から進入して被災地に瞬間移動し、その場所で表示されていたアバターに話しかけ、現地の被災状況をいち早くキャッチし、また適切なアドバイスを現地被災者に直接伝えた、と言うことだ。

                     そうだ、ゆっくりしている場合じゃない、さあ、イベント会場に急ぎましょう。

                     

                     渋谷区道玄坂のイベント会場に着いた。「イギリス留学準備セミナー」私これに出席したかったんだ。会場には、イギリスに留学したいという同志が既に100人近く集まっていた。受付で資料をもらったとき、受付係りの人から、「共有仮想タグによるコミュニティに入会しませんか?」と誘われた。私は喜んで入会した。

                     

                     以前のイベントでは、受付で住所氏名やメールアドレス等の個人情報を記入させられて、後々イベント主催者側からダイレクトメールがしつこく送られてきたが、最近では、イベント主催者側と参加者側との情報のやり取りは、自由参加のコミュニティで行なうようになった。ボブと作成した共有仮想タグは個人同士のコンタクト手段だが、それをイベント主催者側と各参加者同士のコンタクト手段に広げたのが、この「共有仮想タグによるコミュニティ」だ。自分のGoogleグラスを操作して受付の無線LANアクセスポイントと交信するだけで、簡単に「共有仮想タグによるコミュニティ」に入会できる。

                     

                     入会した後、私は早速バーチャル世界の渋谷区道玄坂のイベント会場に進入してみた。既にそこにはコミュニティ用共有仮想タグが作成されており、タップしてみると、イベント主催者側の作成したホームページが開き、参加者への連絡コーナとか参加者によるコミュニティコーナ等が作成されている。コミュニティコーナには既に数件の書込みがなされていた。先ずは自己紹介と思い、私も書き込んだ。今後は、このコミュニティを通じて同じ志を持った者同士による有意義な情報交換ができそう。人同士の新しい繋がりができたらいいな。なにかワクワクしてきたわ。プライバシーの心配もなく「共有仮想タグ」様様ね。

                     この「共有仮想タグによるコミュニティ」、最近では合コンで利用される店でよく採用されているらしい。店側にしてみれば、合コンでの利用客をなんとかリピータにしたいという思惑があり、合コンでの利用客を店が作成した「共有仮想タグによるコミュニティ」に勧誘するとのこと。合コンの参加者は、そのほとんどが既に「もう1つのセカイ」のアプリをダウンロードしているところに目を付けたのだろう。合コンなどで初対面の相手に対しメアドの交換は抵抗を感じる女性が多いため、合コンなどの参加者は事前に「もう1つのセカイ」のアプリをダウンロードしていることが当り前の風潮になっている。

                     この「共有仮想タグによるコミュニティ」、今後は客を相手にする小売店全体に普及しそうだ。

                     

                     イベントも終わり帰宅する途中で、私のGoogleグラスにポップアップ通知がなされた。コンタクトページに書込みがあったことの通知だわ。どこの共有仮想タグだろう? あら、先ほど渋谷のマークシティー前で作成した共有仮想タグだわ。たしかボブと名乗ってたわね。忘れないうちにメモしておこうと思い、Googleグラスの共有仮想タグ帳を開いた。

                     

                     最近のGoogleグラスでは、アドレス帳の他に共有仮想タグ帳が表示される。今までに作成した共有仮想タグの作成場所と作成日時とメモ書きとが表示され、私は先ほどの渋谷のマークシティー前で作成した共有仮想タグのメモ欄に、「イギリス人のボブ。近々東京にくるかも。渋谷に興味を持っている。」と書き込んだ。このリスト表示された多数の共有仮想タグの中からアクセスしたい共有仮想タグを選んでタップすることにより、その共有仮想タグが作成されているバーチャル空間にジャンプできる。また、「直接アクセスモード」に切換えた状態でリスト表示された共有仮想タグをクリックすると、バーチャル空間へのジャンプを省略して直接その共有仮想タグのコンタクト用ページにアクセスできる。

                     今や、この「共有仮想タグ帳」は、アドレス帳に次ぐ第2の繋がりデータベースの地位を築いたようだ。

                     

                     渋谷マークシティー前の共有仮想タグをクリックしてコンタクトページを開いてみると、ボブからの書込みがなされている。書き込み内容は、秋葉原で発生した通り魔殺傷事件に関することだった。へー イギリスでも有名な事件になってたんだ。しかし、ボブって、「もう1つのセカイ」のタイムマシン機能を知らないのかしら?

                     

                     あれは確か11年ほど前の事件だったわね。検索してみたところ、事件発生日時が2008年6月8日となっている。早速バーチャル世界に進入して、2008年6月8日の秋葉原にタイムスリップしてみた。そう、「もう1つのセカイ」は、場所だけでなく過去の時間にも瞬間移動できるというタイムマシン機能を有している。いわば、四次元的広がりを持つ時空間なのだ。

                     2008年6月8日の秋葉原バーチャル空間には、たくさんの仮想タグ(エアタグ)が貼り付けられていた。それらをクリックすると、当時の生々しい状況や撮影映像を閲覧することができる。また、その仮想タグを作成した本人と仮想タグを介して情報交換が可能となる。私は、2008年6月8日の秋葉原バーチャル空間にアクセスすれば、事件発生当時の生々しい情報を得ることができる旨、コンタクトページに書き込み、ボブに教えた。

                     

                     このように時間軸をも利用したタイムマシン的なアクセスを可能にした「もう1つのセカイ」に長年にわたって仮想タグを蓄積することにより、バーチャル時空間を巨大な歴史データベースに成長させることができる。しかも、この歴史データベースへのデータの蓄積は、膨大な数のユーザ自身が自ら率先して行ってくれるため、コストをかけることなく巨大歴史データベースを構築できる。最近ではこの巨大歴史データを有効活用しようと、各種企業が乗り出してきた。この巨大歴史データを整理して、より便利に活用できるようにしようとしている。しかしまあ、なんともはやスケールの大きな話だこと。

                     

                     今は2020年夏、「もう1つのセカイ」が誕生してからもう1年になる。朝Googleグラスでメールをチェックしていると、「もう1つのセカイ」がバージョンアップしたと言うお知らせが届いていた。なになに、ニューバージョンでは、タイムマシン機能などの過去への広がりばかりでなく未来への広がりも用意し、四次元的時空間を十二分に楽しめるようにしました。四次元的時空間内の気に入った所にコミュニティ仮想タグを作り、人同士の新たな繋がり空間で楽しんでくださいか。なんだかSFの世界の話のみたいだわね。

                     

                     早速私は、ニューバージョンをダウンロードした。するとメニュー画面が表示され、新たな機能を表すアイコンが一覧表示された。なになに、未来世界、コミュニティ仮想タグ、もう1つの世界へのトラックバック、共通点チェック、歴史データベース、緊急時SOS、四次元データ認証等々、たくさんあるわね。

                     私は先ず「未来世界」のアイコンをタップしてみた。すると、「予定表に予定を入力してください。」のメッセージが表示された。えーと、たしか安室奈美恵のライブが、明後日PM3時から渋谷であったわね。そのライブに行くことになっているので、私は予定表に入力した。すると、明後日PM3時の渋谷のライブ会場のバーチャル世界にジャンプした。これすごいじゃん! 未来のバーチャル世界にジャンプできるのね。そのライブ会場には、既に数人のアバターがいるではないか。予定表に入力した人のアバターだ。私はその中の1人に話しかけてみた。「安室奈美恵のライブ楽しみだね。」すると、「私、○×大学英文学科の3年生。よろしく。」へー、私の1年先輩だ。その後、会話(チャット)が進み、明後日のライブ会場で実際に会うことになった。この「未来世界」なかなかの代物ね。

                     

                     もうこんな時間か。早く大学に行かなくては。

                     大学に続く道を歩いていると、珍しいことに「幸せのハート雲」に遭遇した。割と大きなハート雲で、北東の方向に流れていた。私は、素早くGoogleグラスで撮影した。そういえば、コミュニティ仮想タグと言うのがあったわね。私はコミュニティ仮想タグをクリックし、この場所に「幸せのハート雲」という名前のコミュニティ仮想タグを作成し、撮影した「幸せのハート雲」を投稿した。さあ、大学に急ごう。

                     

                     1時限目の授業が終わり、私は、Googleグラスでバーチャル世界に進入し先ほどの「幸せのハート雲」のコミュニティ仮想タグにアクセスしようと試みたが、ハート雲に遭遇した正確な場所と時間を忘れてしまった。だいたいの場所と時間を入力したところ、見事アクセスできた。後で分かったのだが、もう1つのセカイのサービスプロバイダがサーバを調整して、「幸せのハート雲」の移動に沿って見ることのできる帯状のエリアと時間全体にわたって、コミュニティ仮想タグを作成してくれたらしい。つまり、サーバのデータベースには、経度、緯度、標高の3次元にさらに時間軸をも含めた四次元時空間データが格納されている。その四次元座標軸上にハート雲が見えるエリアを設定し、そのエリア全体にコミュニティ仮想タグを作成したらしい。

                     

                     早速そのコミュニティ仮想タグを覗いてみた。すると、既にたくさんの書き込みやコメントがなされている。それら書き込みやコメントには、「遭遇者」と「非遭遇者」のタグが付されている。へー、サーバ側で設定したハート雲が見える四次元座標エリア内にいた投稿者か否か、区別しているんだ。つまり、もう1つのセカイをONにして移動しているユーザのGPS機能により、そのユーザの移動軌跡をサーバの四次元座標軸上にプロットして記憶しており、そのユーザがハート雲が見える四次元座標エリア内にいたか否か、判別している。

                     この四次元座標軸上でのユーザの移動軌跡データを本人認証にも利用しているらしい。なるほど、ユーザの移動軌跡データは、そのユーザ独自のデータであり、本人か否かを判別するのに適したデータに違いない。

                     ちなみに、今までに作成されたコミュニティ仮想タグのうち1番多くのコメント参加があったのが、2009年7月22日の硫黄島近海での皆既日食らしい。どうしても硫黄島に行けない皆既日食マニアがバーチャル世界から進入して硫黄島に瞬間移動し、現地の観測者とチャットをしたり皆既日食のコミュニティ仮想タグに投稿された皆既日食写真を鑑賞したりして、現地の人と貴重な時間を共有したとのこと。

                     

                     2次元目の心理学の授業で、犯罪心理学のレポート作成が宿題として出された。

                     私は、すぐに秋葉原で発生した通り魔殺傷事件を思い出し、早速バーチャル世界に進入して、2008年6月8日の秋葉原にタイムスリップした。そこにはたくさんの仮想タグ(エアタグ)が貼り付けられており、それをクリックして仮想タグを作成した本人と仮想タグを介してインタビューを行なった。匿名だがインタビュー内容が公開されることを予めことわって、インタビュー内容を公開モードに設定した。犯人の行動や言動、目つき等について色々な生の声を聞き出すことができ、なかなかの収穫だ。そして私は、バーチャル世界(四次元的時空間)で公開されたインタビューの要所要所でトラックバックのハイパーリンクを貼りながら、レポートを書いた。そう、新機能の「もう1つの世界へのトラックバック」をタップすることにより、簡単に自分のレポートにもう1つの世界へのトラックバックを貼ることができる。レポート内のトラックバックURLをクリックすることにより、対応する四次元時空間にジャンプしてインタビュー内容を閲覧できる。世の中変わったわね。

                     

                     今日は、いよいよ安室奈美恵のライブの日だ。1年先輩に会えるのも手伝って私はルンルン気分でライブ会場に出かけた。事前に服装や持ち物を知らせていたのでライブ会場に入るとすぐに先輩を見つけることができた。「はじめまして。私鈴木恵子です。」すると先輩は「堅苦しい挨拶は抜きにして、もう1つのセカイで共通点チェックをしましょう。」「そういえばそのようなアイコンもありましたね。」そう言って私と先輩は互いのGoogleグラスの「共通点チェック」のアイコンをタップした。すると、互いに2010FIFAワールドカップを観戦していたことや同じレストランへよく食事に行くこと等の互いの共通点がリストアップ表示された。「へー、先輩もFIFAワールドカップを観戦したんですか。」その後は、互いに話が弾み、簡単に友達になることができた。

                     この「共通点チェック」は、サーバに蓄積された四次元座標軸上での各ユーザの移動軌跡データをマッチングチェックして互いの共通点を抽出するものらしいが、初対面の時の共通の話題選びには最適な機能だ。

                     

                     もう1つのセカイのニューバージョンには、その他にもいろいろな新機能があるらしい。初めはSFの世界の話のように思えたが、実際に使ってみれば、れっきとした現実世界の話であり、驚いてしまう。

                     

                     この「もう1つのセカイ」、マーケティング的には、先進諸国での若者の繋がり願望を満たす新サービスとして開発されたらしい。Facebooke等のリアル世界に軸足を置いての人間関係の構築、ハンドルネームや完全匿名によるネット世界に軸足を置いての人間関係の構築。

                     それらとは異なり、「もう1つのセカイ」は、リアル世界とバーチャル世界の両者を利用して時と場所に適したアドホックな(即席の)人間関係を構築するもの。例えば、「コミュニティ仮想タグ」は、「リアル世界で生じた特定の出来事(例えば皆既日食)に結び付いた人間同士のバーチャル社交場」として機能する。

                     

                     しかも、一旦構築された多数のアドホックな人間関係を、継続した人間関係にするか否かは、互いが共有仮想タグ等にアクセスし続けるか否かにかで決まる。よって、一旦構築された多数の人間関係をためらうことなく切り捨てることも可能だ。相手を特定して切り捨て操作をすればその相手が投稿してもポップアップ通知さえされなくなる。メアドを交換してしまった場合にはそう簡単にはいかない。また、Facebooke等のSNSでの自分のページは、いわばネット上での自分の自宅や庭に相当するものであり、一旦相手に知らせるとその相手との人間関係を切り捨てることができにくくなる。その点、共有仮想タグやコミュニティ仮想タグは、自分の庭の外にできた出先社交場であり、そこに出向かないようにすれば縁が切れる。しかも、アドホックな人間関係を継続的な人間関係にしたとしても、その後からなんのためらいもなく切り捨てることも可能だ。

                     

                     一見クールすぎるようにも感じるが、昨日までの私と今日からの私はどこかが違っており、それに合わせて人間関係も新陳代謝が必要だ。昔、「SNS疲れ」と言う言葉が流行ったが、人間関係の奴隷から解放されるためには、人間関係の新陳代謝(淘汰の方がピッタリかも)は不可欠と思う。

                     

                     「もう1つのセカイ」のおかげでアドホックな人間関係がすごい勢いで増殖している。大量の人間関係を構築する一方で不要な人間関係を冷徹に切り捨て、真に有用で優れた人間関係のみを残す。これからの人間関係は「クールな自然淘汰」の時代になってくるのだろう。

                     

                     最近のニュースで読んだのだが、「もう1つのセカイ」のプロバイダの真の狙いは、ソーシャルグラフ(人間関係相関図)のデータベースの利活用分野で覇権を握ることらしい。ソーシャルグラフのデータは、家電業界や広告業界がマーケティングに利用しようと喉から手が出るほど欲しがっている。

                     現在、この分野では何と言ってもFacebookeが覇権を握っている。Facebookeで構築されている人間関係より有用で優れた人間関係をFacebookeの外に構築することにより、Facebookeのソーシャルグラフデータの有用性を低下させ、より優れた人間関係のデータベースの方に鞍替えさせようと、目論んでいるようだ。

                     たしかに、人間関係相関図のデータベースは、人間関係が構築されて初めてその中身であるデータが充実する。そのソーシャルグラフ(人間関係相関図)の上流側である「人間関係自体の構築」を「もう1つのセカイ」のプロバイダに牛耳られた場合には、下流側のFacebookeは干上がってしまう。

                     「勝ち馬を越えるには勝ち馬の活動エリアの上流側を牛耳るべし。」 これは、名言かもしれない。
                    iff-society * - * 13:16 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

                    未来社会のあるべき姿(青写真)

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                       未来社会ブログに初めてコメントが付きました(感激!)。

                       未来社会研究所で見ている未来の姿とはどのようなものか? という難しいご質問をいただきましたの、2年前に書いた小論文「未来社会のあるべき姿(青写真)」をエントリーします。

                       

                      1.序論

                       以下の3点を考察し、その考察結果をベースにして“未来社会のあるべき姿(青写真)”を描きます。

                       (1) マクロ的視点から見た世界経済の傾向

                       (2) マーケティング3.0的な視点から見た先進国の若者層(17〜35歳)におけるニーズの変化

                       (3) 現在でのIT分野の潮流を考慮した未来社会の方向性

                       

                      2.考察

                       (1) マクロ的視点から見た世界経済の傾向

                       現在の資本主義は末期状態に至っています。先ずはその末期状態になった経緯を解説し、次に次世代の資本主義について考察します。

                        (i) 末期状態の資本主義

                       資本主義の三大原則は次のものです。

                        私的所有(富=商品に対する排他的な完全な支配の相互承認)、

                       b 契約(商品に対する排他的支配の相互承認という前提の下では、商品の交換は、交換当事者双方の合意なくしては存在し得ない。この合意が契約である)、

                        法的主体性(商品交換においては、交換当事者は、私的所有及び契約をとおして、相互の独立主体性――すなわち法的主体性――を承認しあっていること)

                      (川島武宜『民法総則』有斐閣より)

                       

                       この三大原則を手中に収めた人類が、その三大原則を思う存分活用した結果が、現在の資本主義の末期状態を招いています。末期状態になった根本原因は、三大原則が悪かったというよりは、むしろ活用した人間側に問題があるように思えます。この人間側の問題は今回のテーマでないため割愛するとして、以下には、先ず、資本主義が末期状態に至った歴史的経緯を時系列的に列挙します。

                       

                        大量生産大量販売による利益効率の追求。

                        大量生産大量販売を実現するツールとして、資本を貸す金融業、動力源を提供する電力会社、オートメーション設備等が発展した。

                        大量生産大量販売による生産物の価格競争に勝利するべく、グローバリゼーションが進行し、メガコンペティションの時代に突入。

                        勝ち組になるためには負け組の存在が必須というゼロサム経済の宿命に倣い、列強による弱小国の経済植民地化が暗躍された。

                        物やサービスの製造販売から得られる利益の限界を超えてまで利益追求を貫徹するべく、実体経済から離れた投機マネーが横行し、金融工学が発展した。証券や金融業が発展し、先取り経済が大規模化した。その副作用として、バブル経済とバブルの崩壊とが繰り返される現象(以下「崩壊不可避現象」という)が発生した。

                        経済のグローバル化とマネー経済の大規模化とが上記崩壊不可避現象によるダメージを世界規模にまで押し広げ、副作用で受ける傷があまりにも大きくなりすぎた。

                       

                        (ii) 次世代資本主義

                       元ゴールドマン・サックス、現在ニューヨークで投資銀行を経営する、神谷秀樹氏と、元大蔵省(現財務省)出身で、現慶応大学ビジネススクール准教授の小幡積氏との対談集、「世界経済はこう変わる」の書籍では、“次世代の資本主義”として、次のことが記載されています。

                       

                       「富を追求した結果の高度成長ではなく、もっと精神的な充実感を求めるべきです。たとえば幸福指数の上昇という観点からの高度成長を目指していくべきです。」(208頁)

                       

                       「自然環境ばかりでなく、“社会環境”の整備も重要です。“社会環境”とは、人々のつながりであるとか、家族の愛情であるとか、コミュニティであるとか、今までまさに失っていたものすべての再建を意味すると思います。よい社会環境とは、一言で「共感のある社会」といえるかもしれません。」(211頁)

                       

                       以上のことより、次世代資本主義とは、次のように定義できるのではないかと思います。

                       「富(マネー)の追究によって得られる副産物としての幸福ではなく、幸福自体を直接追求することを目的とし、その達成手段として、人同士の繋がり、地域やコミュニティとの繋がりを築き、自分だけの自分に最適な繋がり世界を構築し、そこに自分独自のハッピーライフを見つけ出す」

                       旧資本主義での達成目標は、富(マネー)の取得であったため、富(マネー)の多い少ないという全人類一律の尺度で序列が決まり、その結果勝ち組の存在のためには負け組の存在が必須となります。

                       しかし、次世代資本主義での達成目標は、各個人の幸福であり、各個人の主観的な価値観や人生観という一律でない個別な尺度で目的達成度合いが決まるため、勝ち組負け組の言葉自体がなくなります。

                       

                       (2) マーケティング3.0的な視点から見た先進国の若者層におけるニーズの変化

                        博報堂生活総合研究所の吉川昌親孝上席研究員によれば、

                       「29歳以下の若者世代を、生まれたときからネットに親しんできたジェネレーションeと名付け、このような若い世代では、人と繋がることに価値を見出し、情報を互いに提供し合うことで何かが生まれることに期待している。30歳以上の世代はネットに対して情報収集力を期待しているが、ジェネレーションeの世代では、小さい頃から携帯電話を手にしコミュニティを形成し、友人や知人との間にある空気を読み、繋がり感を大事にしている。」(日経コミュニケーション2009年1月1日41頁より)

                       さらに、前述の“人と繋がることの価値感”について、ネット社会と著作権問題を専門とする法政大学の准教授白田秀彰先生が、興味深い内容を以下のURLに投稿しています。

                      「新時代・あらゆるコンテンツは「ニコ動」でイジられる!」

                      http://www.cyzo.com/2008/07/post_728.html

                       

                       コンテンツの価値は話のネタ(コミュニケーションツール)であり、ユーザがニコニコ動画に投稿した動画等のコンテンツは他のユーザによっていじられる(二次製作される)ことで、コミュニケーションツールとしての価値が生ずるという内容です。

                       以上より、ジェネレーションe世代においては、人同士の繋がり、地域との繋がり、さらにはコミュニティでの繋がりに大きな価値を感じており、物、富(マネー)、名誉、あるいは立身出世等にはあまり価値を見出していないようです。

                       

                       デジタルネイティブ(ジェネレーションeとも言う)は、生まれたときからインターネットや携帯電話の存在が当たり前になっており、二十四時間いつでも友達とつながりあうことが可能な環境に生まれついています。これが原因で、物への欲望よりも人間関係への欲望が増長されたようです。いろんな人と知り合い、おもしろい人に出会いたい。一緒にいて楽しい人と時間を過ごしたいし、また自分も他人からそう思われたい。などの欲望が増殖したのでしょう。

                       

                       この若者の繋がり願望の増殖は、上記した“次世代資本主義”のようなロジックに基づいたものではなく、単に、二十四時間いつでも友達とつながりあうことが可能な環境に生まれた結果、期せずして“次世代資本主義”を地で行く結果になったのでしょう。

                       

                       その結果、“次世代資本主義”が目指す理想とは異なる厄介な副作用が若者に間に生じています。以下のページをご参照ください。

                      http://ameblo.jp/tenchan58/entry-10549973582.html

                       

                       このカルチャースタディーズ研究所の“和風志向と人間関係”によれば、次のような負の副作用が記載されています。

                       

                       「人間関係を大切にしたいという気持ち自体が増えたと言うよりは、誰もが即座につながれるというメディア環境の変化によって、人間関係を重視せざるを得ない状況になっている。その空気の真っ只中にいまの若者はいるのだ。そういう空気を読まざるを得ない状況からの行動が、上の世代から見ると「草食化」と写るのだろう。人とつながるといえば聞こえはいいが、裏を返せば拘束されているのである。・・・このように、誰にどう思われるかを気遣って生活していれば、自然と、他者と同調しようとするようになる。突出して目立ったり、波風立てたりすることを避ける。過剰なまでに同調性を求める若者の姿を、私は原田曜平氏(博報堂主任研究員)との共著の中で「情報病」と名付けた。情報を活用する一方で、情報に依存し振り回されている面があまりにも多いと思えるからだ。」

                       

                       今後は、上記したような若者の欲望の変化を目ざとく察知してそれにターゲットを合わせた新サービスが台頭してきます。いや、既に現時点でも複数台頭してきています。Facebookはその代表格であり、mixiの「ソーシャルグラフプロバイダー宣言」もその表れです。

                      http://mixi.co.jp/press/2010/0910/3743

                       

                       しかし、これらニューカマーが台頭した次のステップでは、どのような展開になるのでしょう。

                       当然のこととして、上記したような“負の副作用”が着目されるようになり、この“負の副作用”を解決するソーシャルグラフプラットフォーマーが、覇権を握ることとなります。

                       その結果、今後の未来社会では、人間関係に拘束され気遣って疲れ果てるという、“人間関係の奴隷”から解放され、人間関係を有意義に使いこなし、真に自分にとって最適な繋がり世界が構築できるようになると思われます。

                       

                       (3) 現在でのIT分野の潮流を考慮した未来社会の方向性

                       IT分野で今何がおきているのか、これからどうなるのか、の順に記載します。以下の記載は、ソーシャルメディア維新(オガワカズヒロ著;マイコミ新書)を参考にしています。

                        (i) IT分野で今何がおきているのか

                       IT分野では、現在一大変革が起こりつつあります。ソーシャルメディアの台頭です。ソーシャルメディアとは、人と人とのつながりを促進・サポートするサービスによって広がっていくように設計されたメディアのことです。たとえば、FacebookTwittermixi、グルーポン、DeNA、ココア等が代表企業です。

                       「人と人とのつながりを促進・サポートする」という点で、前述の“次世代資本主義”を先取りしたような新産業であり、これからの時代にマッチし、当然発展するであろう産業です。

                       この新産業により構築される人間関係のデータがソーシャルグラフ(人間関係相関図)であり、このソーシャルグラフのデータベースは、今後の“産業の米”になると思われます。このソーシャルグラフのデータの利活用の態様としては、最もオーソドックスなのが、人間関係の繋がり(ネットワーク)を流れる情報を利用しての広告で、その広告の結果としてのショッピングがソーシャルコマースです。ソーシャルコマースに関しては、次のページが参考になります。

                      http://techwave.jp/archives/51477450.html

                       

                       このような人間関係の繋がり(ネットワーク)を利用しようと、家電業界も虎視眈々と狙っています。

                      [jp] mixi graph APIは家電とも繫がるーーmixiはウェブの外もソーシャル化する

                      http://jp.techcrunch.com/archives/jp-20100910-mixi-meetup-2010-mixi-graph-api/#

                       まさに、ソーシャルグラフのデータベースは今後の“産業の米”になろうとしています。

                       

                       さて、IT分野の進歩はとどまるところを知らず、Facebookはこのソーシャルグラフのデータベース化に飽き足らず、ソーシャルグラフをさらに一歩進めた“オープングラフ”のデータベースを構築しようとしているようです。“オープングラフ”とは、人間が持つ様々な情報への興味・関心(インタレスト)とその人間との関係を紐づけて集計し、それをソーシャルグラフに合体させたデータです。

                       Facebookはこのオープングラフのデータベース化でなにを狙っているのか。ソーシャルグラフのデータベース化により人間関係というリアルなネットワークをウェブ上に完全に移行(コピー)した上で、その人間の社会生活におけるすべての興味・関心(インタレスト)のリンクを構築し、ウェブページ同士のリンクに過ぎないハイパーリンクを凌駕しようとする目論見が垣間見えてきます。このようなオープングラフのデータベースは、リアル世界での人間の社会生活の痕跡全てをネット上にコピーするというものであり、いわばネット上に構築された“もう1つの社会”です。

                       さらに面白いことに、前述した人間関係の繋がり(ネットワーク)を情報がどのように流れるか(ソーシャルストリーム)に応じて、ソーシャルグラフが自動的に変化(進化)します。ソーシャルストリームの状態変化をソーシャルグラフにフィードバック制御しているのだと思います。これはなにを意味するのか。ネット上に構築された“もう1つの社会” が、自立して増殖し進化することを意味します。

                       

                        (ii) これからどうなるのか

                       今や、データベースを制するものは世界市場を制する時代です。ソーシャルグラフやオープングラフのデータベースで覇権を握ったものが今後の世界を牛耳ることになりそうです。

                       一方、ソーシャルグラフやオープングラフのデータベースを構築してそれらデータを各種サービスプロバイダに提供するプラットフォームビジネスを行なう業者(Facebookmixi)も、未来永劫に安泰かというと、そうでもありません。今考えられる不安材料としては、唯一、データベース構築の川上側を他社に牛耳られることです。つまり、人間関係相関図のデータベースは、人間関係が構築されて初めてその中身であるデータが充実するものです。よって、優れた(または有用な)人間関係を構築する名うての業者が出現した場合、今まで構築さていた既存のソーシャルグラフやオープングラフのデータの有用性が低下します。結局、より優れた人間関係のデータベースの方に鞍替えすることになるでしょう。

                       以上より、ソーシャルグラフ全盛期を迎えた後(5年後?)では、主戦場が人間関係構築産業に移るのではないかと推測されます。本当に優れた人間関係、ほんとうに有用な人間関係の構築を支援する産業が台頭しそうです。

                       次に、ソーシャルグラフ全盛期(5年後?)を迎えたときの1つの懸念として、大衆のコントロールが推測されます。ソーシャルグラフやオープングラフのデータを利用したサービスは大衆を或る一定の行動に掻き立てる力を持っています。分かり易い事例を1つだけ示します。

                       前回のアメリカ大統領選でのオバマ候補は、次のようなネット戦略を採用して成功を収めました。

                       「オバマ陣営は、Facebookにマイページを立上げ、「サポーターになる」というボタンをクリックすると、Facebook上の自分のフレンドたちに「○○さんはバラク・オバマのサポーターになりました」と情報が配信されるよいにし、インターネットの世論を、実際の政治行動に接続させるパイプラインをうまく構築して大成功を収めた。」

                       

                       このように、前回のアメリカ大統領選では、SNS等のネット上の言論空間をうまく利用すれば、大衆を束ねてコントロールし、在る一定の行動に駆り立てることが可能であることが、証明されたものと思われます。

                       つまり、情報を制する者は世界をコントロールできる時代となりつつあります。

                       一方、ITの分野では今、クラウド化が猛スピードで進行しています。クラウドの場合、クライアント側で実行されていたソフトウェアやデータがネットのあちら側に移行されます。その結果情報の一極集中が生じます。特に、ネットの世界では、規模のメリットがものを言うところがあり、自由競争市場による自然淘汰の結果寡占化が進み、クラウドプラットフォーマーが極めて少数の企業に淘汰された未来社会が実現する可能性があります。その結果、世界中の情報がその極めて少数のクラウドプラットフォーマーに集中する状態になります。

                       そうなると、この少数のクラウドプラットフォーマーは、その気になれば、世界を自分の手のひらの上で踊らせることもできるという、強大な力を得ることになります。

                       このような“強大すぎる力”を得た組織なり人間が、はたして健全な自由競争の下でのまっとうな活動に甘んじていられるのか。その答えは、少し歴史を振り返るだけで、誰でも察しがつくと思われます。なによりも、このような“強大すぎる力”を持った組織なり人間を時の権力者が利用しないはずがありません。この“強大すぎる力”と権力者との結託がもたらすものは、独裁政治による世界支配に他ならないと思われます。

                       以上述べたような、“独裁政治による暗黒の未来世界”が到来する可能性は、少ないかもしれないが、少なくとも0%ではありません。クラウドが繁栄した未来社会は、極めて効率的かもしれないが、前述のような危険性をはらんだ脆弱な社会になりかねません。

                       

                      3.未来社会のあるべき姿

                       上記(1)〜(3)の考察結果を踏まえた上で、いよいよ子供世代に自慢できる未来社会のあるべき姿を模索します。

                       子供世代に自慢できる未来社会では、少なくとも以下のことが達成されなければなりません。

                        富(マネー)を追究する経済から各個人の幸福自体を直接追求する社会への転換

                        ソーシャルメディアの負の副作用である“人間関係の奴隷”から解放され、人間関係を有意義に使いこなし、真に自分にとって最適な繋がり世界が構築できる社会の実現

                        情報の一極集中に起因した“独裁政治による暗黒の未来世界”への対策

                       

                       上記aとbは互いに結びついているために、両者をまとめて考察します。

                       (aとb) 各個人の幸福自体を追求するためには、先ず各個人が自分自身を研究する必要があります。自分は一体なにがしたいのか、なにに興味がありなにが好きなのか、なにに向いているのか、どのような人生をおくるのが自分にとって幸福なのか、ということを究明しなければなりません。

                       昔、パソコン教室やパソコン上達ソフトがありましたが、未来社会では、マイハッピーライフ発見教室やマイハッピーライフ発見支援サービス等の新産業が台頭するかもしれません。人間の幸福自体を科学する学問も必要になりそうです。

                       問題は、このような新産業にニーズがあるのか、コマーシャルベースに乗り収益可能なのか、が問題です。これらがなければ、絵に描いた餅に終わってしまいます。

                       そこで、前述した有用な人間関係の構築支援産業と合体させる方法が考えられます。先ず各ユーザのマイハッピーライフの提案や支援を行ない、マイハッピーライフの態様が決まった段階で、そのマイハッピーライフに最適な人間関係およびインテレストの構築支援を行ないます。このような一連の過程をストリームライン化して提供するサービス業を台頭させます。

                       その結果、自分にとって本当に有用な人間関係が構築でき、優れたソーシャルグラフデータベースが構築できるばかりでなく、各ユーザもその有用なソーシャルグラフを積極的に利活用するようになり、“人間関係の奴隷”ではなく人間関係を主体的に利活用するのうになると思われます。

                       また、このようにシステマティックに人間関係を構築するようになれば、ネット上で膨大な人間関係が構築されるようになります。そこで、可能であれば、もう少し人間関係の新陳代謝を行ないやすいシステム設計が必要になるかもしれません。

                       

                      iff-society * - * 10:05 * comments(1) * trackbacks(0) * - -
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